カワウソの飼い方について解説します

カワウソは、その愛らしい仕草や賢さから、近年ペットとして注目を集めています。
しかし、その飼育には多くの現実が伴います。
かわいらしい姿の裏に隠された、経済的、時間的、そして倫理的な側面について、今回は詳しく解説します。

□カワウソ飼育の現実

*必要となる費用

カワウソをペットとして飼育するには、初期費用と維持費用がかさみます。
正規ルートで輸入されたコツメカワウソは1頭あたり250万円、場合によっては550万円という高額で取引されることもあります。
これは、ワシントン条約による規制強化や、密輸ルートでの高騰が影響しています。

飼育に必要な設備も多岐にわたります。
カワウソは水辺で生活する動物であるため、十分な広さの水槽、水質を維持するためのフィルター、温度管理システムなどが不可欠です。
これら初期設備には数十万円から数百万円かかることもあります。

毎月の維持費用としては、食費が挙げられます。
雑食性ですが、カニなどの甲殻類を好むため、食費も高額になりがちです。
また、病気や怪我に備えた医療費も考慮する必要があります。
カワウソを診察できる動物病院は限られており、専門的な治療が必要な場合は、さらに費用がかさむ可能性があります。

*必要な世話

カワウソの飼育には、時間と手間を惜しまない覚悟が必要です。
彼らは非常に活発で好奇心旺盛なため、十分な運動と刺激を与えなければ、ストレスを感じてしまいます。
毎日、複数回にわたる遊びやコミュニケーションの時間が必要となります。

生活空間を清潔に保つことも重要です。
カワウソは排泄物や体臭に独特の匂いがあるため、頻繁な掃除や水質管理が不可欠です。
特に、水浴びや遊びのスペースは、常に清潔な状態を保つように心がける必要があります。

さらに、カワウソは野生動物としての本能や習性が強く残っており、人間の都合に合わせて生活をさせることには限界があります。
彼らが本来持っている行動を制限することは、精神的な負担となり、問題行動につながる可能性も指摘されています。

*寿命と健康

コツメカワウソの寿命は、一般的に10年から20年程度と言われています。
しかし、これはあくまで平均であり、適切な飼育環境と健康管理があってこそです。
野生動物であるカワウソは、偏った食事では栄養バランスが崩れやすく、健康を損なうリスクがあります。

また、カワウソは特有の病気にかかることもあり、その診断や治療ができる獣医師は非常に限られています。
万が一、病気や怪我をした場合に、適切な医療を受けさせることができない可能性も考慮しなければなりません。
飼育環境の変化やストレスは、健康状態に大きく影響するため、常に細心の注意を払う必要があります。

□カワウソを飼う難しさ

*入手方法の問題

カワウソの入手方法には、深刻な問題が潜んでいます。
動物園からカワウソが流出しているのではないかという疑念や、ブリーダーからの不正な販売ルートが存在することが示唆されています。
しかし、その実態は不透明であり、密輸や不正取引の温床となっている可能性が指摘されています。

本来、動物園は保護や研究のために動物を飼育しているはずであり、そこからカワウソが一般に流出することは考えにくいとされています。
にもかかわらず、「動物園からブリーダー経由で入手した」という話が存在すること自体が、業界の闇や密輸の存在を疑わせる要因となっています。

ワシントン条約により、コツメカワウソは附属書Iに掲載され、国際取引は原則禁止されています。
しかし、登録票を取得すれば売買が可能となるため、密輸された個体が登録票を取得され、正規ルートで流通しているケースも報告されています。
このような状況は、カワウソの密輸を根絶することを困難にしています。

*法律による規制

コツメカワウソは、2019年11月26日以降、ワシントン条約附属書I(CITES1)に掲載され、国内では種の保存法が適用されることになりました。
これにより、売買には必ず登録票の取得が義務付けられています。
しかし、前述したように、登録票があっても密輸由来の個体である可能性を排除できないのが現状です。

法律による規制は、カワウソの不正な取引を防ぐための重要な枠組みですが、その運用や監視体制には課題も残されています。
法改正やDNA鑑定のような科学的な手法の導入など、より実効性のある対策が求められています。

*飼育の危険性

カワウソは、その強力な顎と鋭い歯により、噛みつかれると大怪我をする危険性があります。
気に入らないことがあると流血するほど噛むこともあり、最悪の場合、跡に残るような傷を負う可能性も指摘されています。

また、野生動物であるがゆえに、その生態や習性への理解が不十分なまま飼育してしまうと、飼育個体だけでなく、飼い主にとっても危険な状況を招く可能性があります。
かわいらしい側面だけに目を向け、安易にペットとして飼育することは、カワウソにとっても、人間にとっても、不幸な結果を招くことになりかねません。

□まとめ

カワウソをペットとして飼育することは、多額の費用、膨大な時間と労力、そして専門的な知識を必要とします。
さらに、入手経路の不透明さや、法律による規制、そして噛みつかれるといった危険性も伴います。
これらの現実を十分に理解し、カワウソという動物の生態や権利を尊重した上で、慎重に検討することが不可欠です。
安易な気持ちで飼育を開始することは、カワウソ自身の不幸につながるだけでなく、社会的な問題を引き起こす可能性も否定できません。