猫が甘えん坊になった理由と寄り添う方法

猫との暮らしは、時に驚きに満ちています。
普段はそっけないそぶりを見せていた猫が、急に甘えん坊になったり、いつも膝の上でくつろいでいる猫の行動に変化が見られたりすることもあるでしょう。
そんな愛猫の突然の変化に、飼い主さんは戸惑いや心配を感じるかもしれません。
そこで今回は、猫が甘えん坊になる様々な理由と、それぞれの状況に応じた適切な関わり方について解説します。

□猫が甘えん坊になった理由

猫が甘えん坊になるのには、いくつかの理由が考えられます。
それぞれの状況を理解することで、愛猫の気持ちに寄り添うことができるでしょう。

*母猫やタクシー説

子猫の頃から飼い主さんに育てられた猫の場合、飼い主さんをまるで母猫のように感じていることがあります。
ご飯を与えてくれ、遊んでくれる飼い主さんは、猫にとって安心できる存在であり、母猫と同じように甘えたいという気持ちが働くのかもしれません。
また、猫は高い場所から周囲を見渡すのが好きですが、自分で移動するのが難しい場合、飼い主さんの体にすり寄って抱っこをせがむことがあります。
これは、飼い主さんを「移動手段」、つまり「タクシー」のように利用していると捉えることもできます。
抱っこしてもらうことで、行きたい場所へ楽に移動できると考えているのかもしれません。

*高齢化と運動不足

猫も高齢になると、若い頃に比べて運動量が減り、筋肉が衰えてくることがあります。
そのため、自分で移動するよりも、飼い主さんに抱っこしてもらったり、そばにいてもらったりすることを好むようになる場合があります。
これは、単に甘えたいという気持ちだけでなく、体の変化に伴う行動とも考えられます。
猫は本来、単独で行動することを好む一面もありますが、加齢とともに体力が低下し、以前のように自由に動き回ることが難しくなると、飼い主さんへの依存度が高まることがあります。
特に、高い場所への昇り降りが億劫になったり、トイレまでの移動がつらそうに見えたりする場合は、運動不足や筋力低下のサインかもしれません。
このような時、猫は飼い主さんに甘えることで、安心感や温もりを求めていると考えられます。

*ストレスや分離不安

猫は非常にデリケートな生き物であり、環境の変化に敏感です。
引っ越し、模様替え、新しい家族(人やペット)が増える、来客が多い、騒音などがストレスの原因となることがあります。
このようなストレスを感じた猫は、飼い主さんにまとわりついて甘えることで、安心感を得ようとすることがあります。
例えば、飼い主さんが仕事から帰宅した際に、いつも以上に鳴いてすり寄ってくる、寝るときに必ず飼い主さんの体の上に乗ってくる、といった行動は、不安を和らげようとするサインかもしれません。

また、子猫の頃に母猫から早くに離れてしまった猫は、成長しても愛着障害や分離不安症といった症状を示すことがあります。
飼い主さんがいない時に鳴き続けたり、マーキングをしたり、部屋を散らかしたりする行動が見られる場合は、分離不安症の可能性も考えられます。
これは、飼い主さんへの強い愛着ゆえに、離れていることへの強い不安を感じてしまう状態です。
猫が一人でいる時間を極端に嫌がる、留守番中に粗相をしてしまう、といった場合は、この分離不安症を疑ってみる必要があります。

□甘えん坊な猫への対処法

猫が甘えん坊になった場合、その理由に合わせて適切な対応をとることが大切です。

*安心できる環境作り

猫がストレスを感じている様子が見られる場合は、まず安心できる環境を整えることが重要です。
猫が隠れられる場所を確保したり、静かで落ち着ける空間を作ったりすることで、猫はリラックスしやすくなります。
例えば、部屋の隅に猫用ベッドを置いたり、段ボール箱を用意したりするだけでも、猫は自分のテリトリーとして安心できる場所だと感じやすくなります。
また、新しいペットを迎える場合は、時間をかけてゆっくりと慣れさせていくようにしましょう。
いきなり同じ空間に入れるのではなく、最初は別々の部屋で生活させ、匂いに慣れさせ、徐々に接触の機会を増やすなど、猫のペースに合わせて進めることが大切です。

*適度な遊びと刺激

猫の甘えん坊な行動が、単に退屈や運動不足から来ている場合もあります。
毎日決まった時間に、猫が喜ぶおもちゃで遊んであげる時間を設けることで、適度な運動と精神的な刺激を与えることができます。
レーザーポインターで遊ぶ、羽根つきの棒で狩猟本能を刺激する、といった遊びは、猫のストレス発散に効果的です。
キャットタワーを設置したり、隠れ家を作ったりするのも良いでしょう。
上下運動ができる環境は、猫の満足度を高めます。
また、知育トイなどを活用して、おやつを探させるような遊びを取り入れることも、猫の知的好奇心を刺激し、退屈しのぎになります。

*専門家への相談

猫の甘えん坊な行動が、病気や深刻な精神的な問題に起因している可能性も否定できません。
例えば、急に過剰に甘えるようになったり、分離不安の症状が強く見られたりする場合は、一度動物病院で獣医師に相談することをおすすめします。
猫の行動の変化は、隠れた病気のサインであることも少なくありません。
例えば、甲状腺機能亢進症などの病気によって、猫の性格が急に活発になったり、甘えん坊になったりすることがあります。
また、認知症の兆候として、不安や落ち着きのなさから飼い主さんに甘える行動が増えることもあります。
専門家のアドバイスを受けることで、愛猫の健康状態や精神状態を正確に把握し、適切な対処法を見つけることができます。
獣医師だけでなく、猫の行動専門のカウンセラーに相談するのも有効な手段です。

□まとめ

猫が甘えん坊になる理由は様々ですが、多くの場合、猫なりの理由があります。
飼い主さんを母猫のように感じていたり、高齢による変化であったり、あるいはストレスや不安を感じていたりするのかもしれません。
愛猫の行動の変化に気づいたら、まずはその理由を理解しようと努めることが大切です。
安心できる環境作りや適度な遊びを取り入れ、それでも改善が見られない場合や、心配な症状が見られる場合は、専門家への相談を検討しましょう。
愛猫とのより良い関係を築くために、猫の気持ちに寄り添った対応を心がけていきましょう。