犬の喘息と咳の意外な原因と見分け方

犬が咳をしていると、飼い主としては心配になるものです。
単なる風邪のようなものか、それとももっと深刻な病気のサインなのでしょうか。
咳の原因は様々ですが、特に「喘息」が疑われるケースもあります。
しかし、犬の咳と喘息の症状は似ていることもあり、見分けるのは難しいことも少なくありません。
そこで今回は、犬が咳をする主な原因から、喘息との見分け方、そして咳が出た際の対処法までを解説していきます。

□犬が咳をする主な原因とは?

犬の咳は、その原因によって「生理的な咳」と「病的な咳」に分けられます。

*生理的な咳

水を飲んだときや、興奮して早足になったとき、あるいは冷たい空気を吸い込んだときなどに、一時的に「カハッ」「カッカッ」といった乾いた咳が出ることがあります。
これらは、気道への刺激や一時的なむせ込みなどによるもので、病的なものではないことがほとんどです。
通常はすぐに治まり、特別な治療は必要ありません。

*病的な咳

一方で、病気が原因で咳が出ている場合もあります。
これには様々な原因が考えられます。

・誤飲・誤食
食べ物や異物を誤って飲み込んでしまい、気道に詰まったり、気道を刺激したりすることで咳が出ることがあります。
特に、気道に刺さった草のような異物や、消化できない大きな塊などは、早急な対応が必要です。

・肺炎
細菌やウイルスなどが気管支や肺に感染し、炎症を起こすことで肺炎になります。
痰が絡んだような咳が特徴で、重症化すると呼吸困難や発熱、食欲不振などを伴います。

・喘息
アレルギー反応が原因で気道に炎症が起き、咳を引き起こします。
発作性の激しい咳や、呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音がするのが特徴です。

・アレルギー
花粉、ハウスダスト、ダニ、タバコの煙、香水など、様々なアレルゲンに反応して咳が出ることがあります。
気管や気管支に炎症が起こり、咳につながります。

・心臓病
心臓の機能が低下すると、肺に水が溜まる「肺水腫」などを引き起こし、それが咳の原因となることがあります。
特に僧帽弁閉鎖不全症などは、進行すると咳がひどくなることがあります。

・ケンネルコフ
犬伝染性気管炎とも呼ばれ、ウイルスや細菌の感染によって引き起こされる、咳を主症状とする病気です。
子犬の間で流行することが多く、ワクチンで予防することも可能です。

・気管虚脱
気管を支える軟骨が弱くなり、呼吸をする際に気管が潰れてしまう病気です。
小型犬に多く、「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような咳や、呼吸困難が特徴です。

□犬の咳と喘息の見分け方

犬の咳が喘息によるものなのか、それとも他の病気によるものなのかを見分けるには、咳の様子やその他の症状に注意することが大切です。

*喘息の主な症状

喘息の咳は、しばしば発作的で激しいのが特徴です。
咳が止まらず、吐き出そうとしているように見えることもあります。
また、呼吸をする際に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった特徴的な音が聞こえることがあります。
重症化すると、呼吸困難に陥り、舌や歯ぐきが青紫色になるチアノーゼが見られることもあります。

*喘息以外の咳との違い

肺炎による咳は、痰が絡んだような湿った咳であることが多いです。
一方、気管虚脱の咳は、ガチョウの鳴き声のような特徴的な音を伴うことがあります。
心臓病による咳は、運動時や興奮時に出やすい傾向があります。
これらの咳の音や様子、発生する状況などを注意深く観察することで、喘息との違いを見分ける手がかりとなります。

□犬の喘息について詳しく解説

*犬の喘息とは

犬の喘息は、細菌やウイルスといった感染症が直接の原因ではなく、主にアレルギー反応によって引き起こされます。
ハウスダスト、花粉、ダニなどのアレルゲンに体が反応し、気道に炎症が起こることで発症します。

*喘息の症状

初期症状としては、急に咳き込み始め、30分程度で治まることが多いですが、徐々に治まりにくくなる傾向があります。
痰が絡んだような咳で、吸うときも吐くときも苦しそうに見えます。
重症化すると、呼吸困難やチアノーゼ、痙攣といった危険な状態になることもあります。

*喘息の原因

喘息の主な原因はアレルゲンです。
代表的なものとして、ハウスダスト、花粉、ダニ、タバコの煙、ホコリ、香水などが挙げられます。
これら以外にも、急な気温の変化、ストレス、運動、興奮、感染症などが誘因や悪化要因となることがあります。

□犬の咳の原因となるその他の病気

*気管虚脱

気管虚脱は、気管が潰れてしまう病気で、特に小型犬に多く見られます。
特徴的な咳や、「ガーガー」という呼吸音が現れます。
症状が悪化すると呼吸困難を引き起こすこともあります。

*心臓病

心臓病、特に僧帽弁閉鎖不全症などが進行すると、咳が出やすくなります。
心臓の機能低下によって肺に水が溜まることが原因で、咳や呼吸困難を引き起こします。

□犬の咳が出たときの対処法

*まずは咳の様子を観察・記録する

咳が出始めた時期、頻度、咳の音(乾いているか、湿っているか)、時間帯、咳以外の症状(元気がない、食欲不振、呼吸が苦しそうなど)の有無などを詳しく観察し、記録しておきましょう。
可能であれば、咳をしている様子を動画で撮影しておくと、獣医師に状況を正確に伝えるのに役立ちます。

*呼吸困難が見られる場合はすぐに動物病院へ

愛犬が呼吸困難を起こしている、舌が紫色になっている(チアノーゼ)、ぐったりしているなどの症状が見られる場合は、一刻も早く動物病院を受診してください。

*普段からできる予防策

日頃から、アレルゲンとなるものをできるだけ避ける、ストレスを軽減する、適度な運動をさせて肥満を防止するなど、愛犬の健康管理に気を配ることが大切です。

□動物病院での検査と治療

*検査方法

動物病院では、聴診器による心音や呼吸音の確認、レントゲン検査、血液検査、超音波検査、気管支鏡検査など、様々な検査を行い、咳の原因を特定します。

*治療方法

原因によって治療法は異なります。
喘息の場合は、抗炎症薬や気管支拡張薬の投薬、ネブライザー療法などが行われます。
気管虚脱の場合は、症状の程度に応じて内服薬や外科手術が検討されます。
心臓病の場合は、心臓の機能を助ける薬などが処方されます。

□まとめ

犬の咳は、単なる生理現象から、肺炎、喘息、心臓病、気管虚脱など、様々な病気が原因で起こり得ます。
特に喘息はアレルギー反応が原因で、発作性の咳や特徴的な呼吸音がみられることがあります。
咳の症状が続く場合や、呼吸困難、元気消失などの症状を伴う場合は、重篤な病気の可能性も考えられます。
愛犬の様子をよく観察し、気になる症状があれば、迷わず速やかに動物病院を受診することが、早期発見・早期治療につながります。