猫の認知症進行を遅らせるケアと症状

猫も人間と同じように、年齢を重ねるにつれて心身に変化が現れます。
その変化の中には、認知機能の低下によるものも含まれており、これは「猫の認知症」として知られています。
猫の認知症は、脳細胞の減少に伴い、以前はできていた行動ができなくなる状態を指します。
完治させる薬は現在のところありませんが、適切なケアや環境整備によって進行を遅らせたり、愛猫との暮らしの質を維持することは可能です。

□猫の認知症とは

*認知症の定義

猫の認知症とは、脳の機能が低下し、それによって学習能力や記憶力、判断力などが衰え、日常生活に様々な支障をきたす状態を指します。
これは、脳細胞の減少や機能の衰えが原因で起こり、人間が経験する認知症と多くの共通点が見られます。
猫の場合、一般的に7歳頃からシニア期に入るとされ、15歳以上の猫の半数以上で認知機能の低下がみられるという報告もあります。

*発症しやすい猫

猫の認知症は、特定の猫種に限らず、すべての猫に発症する可能性があります。
加齢が主な要因であるため、高齢になるほど発症リスクは高まります。
一般的に、猫のシニア期とされる7歳頃から症状が現れ始めることが多く、特に10歳を過ぎると認知機能の低下が見られやすくなると言われています。
15歳以上の猫では、その半数近くが何らかの認知症の兆候を示すという研究結果もあります。

□猫の認知症の原因

猫が認知症を発症する背景には、いくつかの要因が考えられます。
これらの要因が複合的に影響し、脳の健康状態に変化をもたらすことで、認知機能の低下につながります。

*加齢による変化

猫の認知症の最も大きな原因は、加齢による脳の自然な経年劣化です。
脳細胞は一度死滅すると再生しないため、年齢とともに脳細胞は減少し、その機能も低下していきます。
これは人間も猫も同様で、脳が発達しきった後、細胞の数は減ることはあっても増えることはありません。
この脳細胞の減少が、認知機能の低下を引き起こす主な要因となります。

*ストレスの影響

過度なストレスは、猫の認知症を促進させる要因の一つと考えられています。
ストレスを感じると、脳内では酸化物質の蓄積が促されると言われています。
これらの酸化物質が脳細胞にダメージを与え、認知機能の低下を早める可能性があります。
そのため、猫が快適に過ごせるよう、ストレスの少ない環境を整えることが大切です。

□猫の認知症の症状

猫の認知症は、その進行度合いによって様々な症状が現れます。
これらの症状は、猫の日常生活における行動や習慣の変化として観察されます。

*行動の変化

猫の認知症の兆候として、これまで見られなかった行動の変化が現れることがあります。
例えば、理由もなく室内を徘徊し続けたり、特定の場所で立ち止まってしまうことがあります。

また、飼い主への甘えが減ったり、逆に過剰に甘えてくるようになるなど、コミュニケーションの取り方に変化が見られることもあります。
おもちゃや遊びへの興味を失い、活発さが失われる一方で、落ち着きがなくなり、意味もなく鳴き続けるといった症状も現れることがあります。

*睡眠の変化

認知症の影響は、猫の睡眠パターンにも現れることがあります。
夜間に落ち着きがなくなり、徘徊したり、鳴き続けたりすることで、睡眠と覚醒のリズムが乱れることがあります。
これにより、夜鳴きが頻繁になり、飼い主の睡眠にも影響を与えることがあります。
昼間に過度に眠るようになったり、活動性が低下するのも、睡眠の変化として見られる症状の一つです。

*排泄の変化

トイレの失敗も、猫の認知症の代表的な症状の一つです。
これまできちんとトイレで排泄できていた猫が、場所を忘れてしまったり、トイレの途中で粗相をしてしまうことがあります。
これは、脳の機能低下により、トイレの場所を認識したり、排泄のタイミングをコントロールすることが難しくなるために起こると考えられています。

□認知症と似た病気

猫の認知症と似た症状を示す病気は他にも存在します。
そのため、症状が見られた際には、安易に認知症と決めつけず、他の病気の可能性も考慮することが重要です。

*他の病気との見分け方

猫の認知症と似た症状を示す病気には、泌尿器系の疾患(慢性腎臓病、猫下部尿路結石、膀胱炎)、糖尿病、甲状腺機能亢進症、高血圧、関節炎などが挙げられます。

例えば、トイレの失敗は、これらの病気による痛みや不快感が原因で起こることもあります。
夜鳴きも、疼痛や痒みを伴う疾患、高血圧などが原因である可能性があります。
室内で迷うといった症状は、脳腫瘍や感覚器の機能低下が原因であることも考えられます。
これらの病気は、早期発見・早期治療が猫の健康維持に不可欠です。

そのため、愛猫に気になる症状が見られた場合は、まずは動物病院を受診し、専門的な検査を受けることが大切です。
動画や写真で猫の行動を記録しておくと、受診の際に役立つでしょう。

□まとめ

猫の認知症は、加齢やストレスなどが原因で起こり、行動、睡眠、排泄などに様々な変化が現れます。
これらの症状は、他の病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。
愛猫の様子を日頃からよく観察し、気になる変化があれば、早期に動物病院で相談することが大切です。
適切なケアや環境整備を行うことで、愛猫との穏やかな生活を長く続けることができます。