コーギーの尻尾の有無について疑問を感じたことがある方、実は歴史的背景があることをご存知でしたか。
今回は、コーギーの尻尾の謎について解説していきます。
◻︎コーギーの尻尾切断の歴史
*牧羊犬としての役割
コーギーが牧羊犬として活躍していた時代、その短い胴体と短い足は、牛の群れを誘導するのに適していました。
しかし、長い尻尾は牛に踏まれたり、木の枝に引っかかったりして怪我をするリスクがありました。
そのため、牧羊犬としての安全を確保するために、尻尾を切断する習慣が生まれました。
この歴史的な背景は、現代のコーギーの姿に大きな影響を与えています。
*税金対策と病気予防
かつてイギリスでは、愛玩犬に対して「犬税」が課される法律がありました。
牧羊犬のように仕事のために飼われる犬は、この税金の対象外でした。
そこで、税金を回避するために、牧羊犬としてのコーギーの尻尾を切断し、「仕事犬」であることを主張する習慣が広まったという説があります。
これは、経済的な理由が犬の身体の一部に影響を与えた、興味深い歴史の一例と言えるでしょう。
また、衛生的な観点から、尻尾に糞尿が付着して病気になるのを防ぐため、あるいは「尻尾を切ると狂犬病を予防できる」といった迷信から断尾が行われたという話も残っています。
これらの説は、当時の人々の衛生観や迷信が、犬の扱い方に影響を与えていたことを示唆しています。
□コーギーの尻尾切断の時期と方法
*切断する時期
コーギーの尻尾は、一般的に生後2日から5日頃の非常に早い段階で切断されます。
この時期の子犬はまだ痛覚が発達していないと考えられており、麻酔なしで処置が行われるのが一般的でした。
これは、子犬への負担を最小限に抑えようとする意図があったのかもしれません。
しかし、生後8日以降に行われる場合は、麻酔に耐えられる時期まで待ってから全身麻酔下で行われることもあります。
これは、子犬の成長段階に応じて、より安全な方法が選択されてきたことを示しています。
*切断する具体的な方法
断尾には主に「切断法」と「結紮法」の二つの方法があります。
切断法は、獣医師がメスなどの外科的な器具を用いて尻尾を切り落とす方法です。
これは、外科的な処置として比較的直接的な方法と言えます。
結紮法は、ゴムバンドなどで尻尾の付け根をきつく縛り、血流を止めて壊死させる方法で、主にブリーダーが行うことがあります。
この方法は、外科的な器具を使わないという点で、切断法とは異なります。
日本では、獣医師による切断法が一般的であり、専門家による処置が行われていることがうかがえます。
□コーギーの尻尾切断の現状
*スタンダードと顧客ニーズ
現在、多くのコーギーはペットとして家庭で飼育されており、牧羊犬としての役割を終えています。
それにもかかわらず、断尾が続けられている理由の一つに、犬種標準(スタンダード)があります。
特にウェルシュ・コーギー・ペンブロークの場合、犬種標準において尻尾の長さが制限されており、断尾された姿が理想とされています。
これは、犬種としての特徴を維持しようとする傾向の表れと言えるでしょう。
また、「コギケツ」と呼ばれるコーギー特有の丸いお尻が、断尾によってより際立つとして、顧客のニーズに応える形で断尾が続けられている側面もあります。
これは、見た目の美しさや可愛らしさが、断尾の判断に影響を与えていることを示しています。
*海外の断尾禁止の動き
動物福祉の観点から、世界的に断尾に対する考え方が変化しています。
多くの国、特にヨーロッパ諸国では、犬に不要な苦痛を与える行為として断尾を法律で禁止しています。
これらの国々では、尻尾は犬の感情表現やコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすと考えられており、その切断は動物のQOL(Quality of Life)を低下させると認識されています。
これは、犬の心身の健康を重視する考え方が浸透していることを示しています。
日本でも、動物愛護の観点から断尾を見直す動きが出てきており、今後は尻尾のあるコーギーが増えていく可能性があります。
これは、社会全体の意識の変化が、犬の扱われ方にも影響を与えていることを示唆しています。
□コーギーの尻尾切断の論点
*切断のメリット
歴史的には、牧羊犬としての安全確保や、税金対策、病気予防といった理由で断尾が行われてきました。
しかし、現代の家庭犬においては、これらの実質的なメリットはほとんどありません。
強いて言えば、犬種標準に適合し、見た目の「コギケツ」を際立たせるという点が、一部でメリットと捉えられているかもしれません。
しかし、これらのメリットは、犬自身の健康や福祉という観点からは、相対的に軽視されるべきであるという意見も存在します。
*切断のデメリット
断尾には、いくつかのデメリットが指摘されています。
まず、子犬の時期に処置が行われるため、痛みや感染症のリスクが伴います。
これは、子犬にとって避けられない苦痛や危険性を伴う処置であることを意味します。
また、尻尾は犬にとって重要な感情表現の手段であり、尻尾がないことで犬同士のコミュニケーションが取りにくくなる可能性があります。
これは、犬の社会性や精神的な健康に影響を与える可能性を示唆しています。
さらに、後遺症として痛みが残る可能性も否定できません。
これは、断尾が一時的な処置にとどまらず、長期的な影響を及ぼす可能性を示しています。
動物福祉の観点からは、不要な処置は避けるべきだという意見が強まっています。
これは、犬の権利や幸福を最優先に考えるべきだという、現代的な動物倫理の考え方を反映しています。
□まとめ
コーギーの尻尾が切られる背景には、牧羊犬としての歴史的な役割や、かつての税金対策、病気予防といった理由がありました。
現代では、犬種標準に合わせることや、顧客の好みが主な理由となっています。
しかし、断尾は子犬に痛みや感染症のリスクを与え、感情表現の手段を奪うといったデメリットも指摘されており、動物福祉の観点から世界的に禁止する動きが広がっています。
今後は、日本においても尻尾のあるコーギーがより一般的になっていくことが予想されます。
これは、過去の習慣や慣習が、現代の倫理観や動物福祉の考え方によって見直され、変化していく過程を示しています。