猫の耳に黒い汚れが見られると、飼い主さんとしては心配になることでしょう。
しかし、その黒い汚れが必ずしも病気というわけではありません。
猫の耳垢は、その性質上、茶色っぽく、ややべたついた状態であることが一般的であり、多少付着している程度であれば、猫自身の耳の自浄作用によって自然に排出されるため、過度に心配する必要はありません。
個体差や生活環境によって耳垢の出方は異なり、全く出ない猫もいれば、常に一定量出る猫もいます。
大切なのは、ご自身の猫ちゃんの普段の耳垢の状態を把握しておくことです。
しかし、耳垢が黒く、その量が多い場合や、強い痒みを伴う場合は、注意が必要です。
これらの症状は、耳ダニ(耳疥癬)の寄生が原因である可能性が考えられます。
耳ダニは外耳道に棲みつき、皮膚の剥がれなどを食べて生活しています。
このダニの排泄物や死骸が耳垢に混じることで、真っ黒な耳垢となり、強い痒みを引き起こします。
特に子猫や、外に出る機会の多い猫は感染しやすい傾向があります。
また、マラセチアという酵母菌の一種が異常増殖することも、黒い耳垢の原因となり得ます。
マラセチアは本来、猫の皮膚や粘膜に常在する菌ですが、耳道内の環境が悪化すると増殖し、濃茶色から黒色の耳垢が出ることがあります。
この場合も、耳垢の量が多くなり、強い臭いを伴うことが特徴です。
炎症を伴うと痛みが生じることもあります。
さらに、外耳炎の兆候である可能性も否定できません。
外耳炎は、耳道に炎症が起こる病気で、その原因は様々です。
耳ダニ感染や、スコティッシュフォールドのような折れ耳で通気性が悪いために起こる細菌感染、腫瘍やポリープなどが挙げられます。
細菌感染が原因の場合、耳垢は黄色や緑色を帯び、膿が混じることがあります。
また、強い臭いを伴い、炎症が強い場合は痛みから頭を振ったり、頭を傾けたりする症状が見られることもあります。
マラセチア感染も外耳炎の原因となり得るため、注意が必要です。
□猫耳の黒い汚れ対処法
猫の耳掃除は、猫がリラックスしている時に優しく行うことが大切です。
まずは、猫ちゃんの耳を優しくめくり、汚れ具合を確認しましょう。
耳介や耳の見える範囲の汚れは、ぬるま湯で湿らせたコットンやガーゼで優しく拭き取ります。
力を入れてこすりすぎると皮膚を傷つけてしまう可能性があるため、撫でるように拭くのがポイントです。
こびりついた汚れも、無理に取ろうとせず、湿らせたコットンなどで丁寧に優しく拭き取ってください。
綿棒は汚れを奥に押し込んでしまったり、耳の内部を傷つけたりする恐れがあるため、使用は避けるべきです。
耳垢が溜まっていて、コットンやガーゼだけでは取りきれない場合は、猫用の耳洗浄液(イヤークリーナー)の使用を検討します。
耳洗浄液は、耳垢を浮かせて除去しやすくする効果があります。
ただし、使用する際は必ず獣医師に相談し、耳に異常がないか、洗浄液に問題がないかを確認しましょう。
慣れないうちは、洗浄液をコットンに含ませてから優しく拭く方法がおすすめです。
猫が慣れてきたら、獣医師の指導のもと、耳に数滴垂らして優しくマッサージし、浮き出た汚れを拭き取る方法もあります。
洗浄液は、動物病院で処方されたものや、獣医師に相談して選んだものを使用するのが安心です。
耳掃除は、やりすぎもやらなさすぎも良くありません。
週に一度程度、耳の状態をチェックし、汚れが気になった時に行うのが目安です。
スコティッシュフォールドなどの折れ耳の猫ちゃんは、通気性が悪いため耳の中が湿りやすく、雑菌が繁殖しやすいので、こまめなチェックがより重要になります。
耳掃除の際は、使用するコットンやガーゼを清潔なものにし、水分が残りすぎないようにしっかりと絞ってから使用しましょう。
耳掃除の後に猫が首を振って残った洗浄液が出てくることもありますが、無理に拭き取る必要はありません。
耳垢の量が異常に多い、臭いが強い、色が通常と異なる(黒すぎる、緑色など)、耳を痒がっている、頭を振る、頭を傾けるなどの症状が見られる場合は、耳ダニ、マラセチア感染、外耳炎などの病気の可能性があります。
猫の耳は非常にデリケートなため、自己判断での処置や市販薬の使用は、かえって悪化させる恐れがあります。
異常を感じたら、速やかにかかりつけの獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けてください。
□まとめ
猫の耳の黒い汚れは、耳垢の性質によるもの、耳ダニ、マラセチア感染、外耳炎などの病気が原因として考えられます。
普段から愛猫の耳の状態を観察し、異常があれば早めに獣医師に相談することが大切です。
耳掃除は、猫がリラックスしている時に優しく行い、必要に応じて洗浄液を活用しましょう。
定期的なケアと、異変にいち早く気づくことが、愛猫の耳の健康を守ることに繋がります。