老犬が吐いてしまうと、飼い主としては心配になるものです。
しかし、犬が吐くという行為には、いくつかの原因が考えられます。
病気によるものだけでなく、食事や環境の変化、ストレスなど、様々な要因が影響している可能性があります。
愛犬の健康を守るために、まずは吐くという現象を正しく理解し、原因に応じた適切な対処法を知っておくことが大切です。
□老犬が吐く原因とは
*吐出と嘔吐の違い
犬が「吐く」という行為には、「吐出(としゅつ)」と「嘔吐(おうと)」の2種類があります。
この違いを理解することは、原因を特定する上で非常に重要です。
吐出は、口から入った食べ物や飲み物が胃に到達する前に、食道のトラブルや嚥下(えんげ)能力の低下などによって逆流して吐き出されることです。
吐き出す前に激しい腹部の収縮運動は見られず、勢いよく内容物が出てくるのが特徴です。
胃に入る前のものなので、未消化の状態であることが多いです。
例えば、急いで食べたフードがそのまま出てくる場合などがこれにあたります。
一方、嘔吐は、胃に入った食べ物や飲み物が胃液と共に吐き戻されることです。
これは脳の嘔吐中枢が刺激されることで起こります。
嘔吐の前には、お腹を激しく収縮させる動きが見られ、吐く内容物には胃液などが混じっていることがあります。
また、嘔吐の前後で犬がぐったりするなど、体調の悪さがうかがえることもあります。
消化不良や胃腸の不調などが原因で起こることが多いです。
*老犬の吐出の原因
老犬の吐出の原因として、まず考えられるのは、食べ過ぎや早食いです。
他の犬に餌を取られたくない、あるいは食事の間隔が空きすぎて空腹が続いたなどの理由から、急いで大量に食べてしまうことがあります。
この場合、胃が食べ物を受け止めきれずに、食道から逆流してしまうことがあります。
また、異物を誤飲してしまうことも、吐出の原因となります。
特に、食道に異物が詰まってしまうと、食べ物が胃に届かずに吐き出されてしまいます。
例えば、おもちゃの破片や骨などを飲み込んでしまい、食道に引っかかってしまうケースが考えられます。
頻繁に吐出が見られる場合は、病気の可能性も視野に入れ、動物病院での診察を受けることが推奨されます。
さらに、巨大食道症のように、食道が異常に拡張して食べ物が胃に届かなくなる病気や、食道の炎症、腫瘍などが原因で吐出が起こることもあります。
これらの病気は、老犬に多く見られる傾向があります。
*老犬の嘔吐の原因
老犬の嘔吐には、様々な原因が考えられます。
食事に関連するものとしては、食べ慣れないフードや、酸化・変質したフードが合わない場合が挙げられます。
急にフードを変更した場合や、古いフードを与えてしまった場合などに起こりやすいです。
アレルギー反応や、消化管内の寄生虫感染も嘔吐を引き起こすことがあります。
誤飲・誤食も嘔吐の原因となり得ます。
おもちゃの破片や靴下など、犬にとって異物となるものを飲み込んでしまうと、腸閉塞などを引き起こし、嘔吐につながることがあります。
また、玉ねぎ、チョコレート、キシリトールなど、犬にとって有害なものを摂取した場合も、中毒症状として嘔吐が見られます。
これらは少量でも危険な場合があるため、注意が必要です。
病気による嘔吐も少なくありません。
胃腸炎や胃潰瘍、さらには腎不全、肝不全、膵炎、子宮蓄膿症、腸閉塞、尿路結石、腫瘍なども嘔吐の原因となり得ます。
これらの病気は、老犬の体に負担をかけ、嘔吐という形で症状が現れることがあります。
頭部外傷が原因で嘔吐することもあります。
ストレスや不安といった心理的な要因も、老犬の嘔吐を引き起こすことがあります。
視力や聴力の低下、認知症などにより、老犬は不安を感じやすくなります。
乗り物酔いや、環境の変化(引っ越し、家族構成の変化など)によるストレスなどが影響する場合もあります。
空腹が原因で、朝方などに白い泡や黄色い液体を吐くこともあります。
これは胃液が逆流したもので、比較的よく見られる現象ですが、頻繁に起こる場合は注意が必要です。
□老犬が吐いた時の対処法
老犬が吐いた際、飼い主としてはどのように対応すれば良いか迷うこともあるでしょう。
しかし、原因を特定し、適切な対処を行うことで、愛犬の健康を守ることができます。
*獣医師への受診目安
吐いた状況や犬の様子を注意深く観察することが重要です。
一度だけ吐いて、その後は普段通り元気で食欲もある場合は、様子を見ても良いこともあります。
しかし、以下のような場合は、速やかに動物病院を受診する必要があります。
- 繰り返し吐く、または吐きたそうにしているのに吐けない
- 吐いたものに血液が混ざっている、または赤みがかったものを吐く
- 舌が紫色や白っぽく変色している(チアノーゼ)
- 嘔吐後にぐったりして、意識がはっきりしない
- 腹部が膨らんでいる、痙攣や下痢を伴っている
- 発熱している、呼吸がおかしく苦しそうにしている
- 食欲が全くない、または極端に低下している
これらの症状が見られる場合は、命に関わる危険な状態である可能性もあります。
自己判断せず、すぐに獣医師の診察を受けましょう。
特に、高齢の犬や、持病のある犬の場合は、些細な変化も見逃さず、早めに受診することが大切です。
*誤飲誤食の予防策
誤飲誤食は、吐出・嘔吐のどちらの原因にもなり得ます。
これを防ぐためには、犬が誤って口にしてしまいそうなものを、犬の届く場所や手の届く場所に置かないことが重要です。
具体的には、小さなおもちゃや壊れやすいおもちゃは与えない、人間の食べ物(特に玉ねぎやチョコレートなど犬にとって有害なもの)は片付ける、薬やタバコなども犬がアクセスできない場所に保管するなどが挙げられます。
部屋をこまめに片付け、犬が誤って口にできないような環境を整えましょう。
また、留守番させる際などは、犬が安全に過ごせるスペースを確保することも大切です。
*早食い防止の工夫
早食いや食べ過ぎが原因で吐いてしまう老犬には、食事の工夫が必要です。
早食い防止用の食器を使用したり、食事を数回に分けて与えたりすることで、ゆっくりと食べられるように促します。
例えば、早食い防止食器は、フードの通り道を複雑にすることで、食べるスピードを遅くする効果があります。
また、知育玩具にフードを入れて与えることも、楽しみながら食べる工夫として有効です。
食事の回数を増やすことは、空腹による吐き戻しを防ぐことにもつながります。
*ストレス軽減の方法
老犬は、視力や聴力、筋力の低下、あるいは認知症などにより、不安を感じやすくなることがあります。
そのため、愛犬がリラックスできるような環境を整えることが大切です。
静かで落ち着ける場所を用意する、急な音や大きな音を避ける、穏やかな声で話しかけるなど、犬のペースに合わせた接し方を心がけましょう。
日頃からスキンシップを大切にし、安心感を与えることもストレス軽減に繋がります。
散歩の時間を一定に保つ、急な環境変化を避けるなども効果的です。
□まとめ
老犬が吐く原因は、「吐出」と「嘔吐」に大別され、それぞれに多様な要因が考えられます。
食べ過ぎや誤飲誤食、食事内容の不適合、さらには病気やストレスなど、原因は多岐にわたります。
吐いた状況や愛犬の様子を注意深く観察し、繰り返しの嘔吐、血の混入、ぐったりしているなどの異常が見られる場合は、迷わず獣医師の診察を受けることが重要です。
早食い防止策や食事回数の調整、誤飲誤食の徹底的な予防、そしてストレスを軽減する環境づくりも、老犬の吐き戻しを防ぐための有効な対策となります。