老犬のお漏らし原因の探求と優しい対策

愛犬が年を重ねると、お漏らしが増えてくることがあります。
その原因は様々で、単に老いによるものと決めつけず、原因を特定し適切な対策を講じることが大切です。
そこで今回は、老犬のお漏らしの原因と、飼い主さんができる具体的な対策について解説します。

□老犬のお漏らし原因

老犬がお漏らしをしてしまう背景には、いくつかの原因が考えられます。
愛犬の様子をよく観察し、原因を探るための参考にしてください。

*老化による機能低下

最も一般的な原因として、加齢による筋力の低下が挙げられます。
若い頃のようにスムーズに排泄のサインを察知し、トイレまで間に合わなくなったり、排泄を我慢する筋力が衰えたりすることがあります。
特に、足腰が弱ってくると、トイレまでの移動自体が困難になることも少なくありません。
排泄をコントロールする括約筋の機能が低下することで、意図せず尿や便が漏れてしまうケースも多く見られます。

また、感覚器の衰えによって、尿意や便意を感じにくくなることも、お漏らしが増える一因となります。
これまで問題なくトイレができていたとしても、徐々にその機能が衰えていくため、飼い主さんが気づかないうちに進行していることもあります。

*病気や疾患の影響

お漏らしは、病気や疾患のサインである可能性も否定できません。
例えば、糖尿病や腎臓病といった病気は多飲多尿を引き起こし、結果としてお漏らしにつながることがあります。
また、膀胱炎や尿路結石などの泌尿器系の疾患も、頻尿や尿意切迫感からお漏らしを誘発する要因となります。

ホルモン系の疾患、例えばメス犬のホルモン反応性尿失禁や、オス犬の前立腺肥大なども、お漏らしの原因として考えられます。
さらに、椎間板ヘルニアや脳腫瘍などの神経系の疾患が原因で、排尿をコントロールする神経が損傷し、排泄のコントロールが難しくなるケースもあります。
その他にも、関節炎などの痛みで動くことが辛くなり、トイレまで行くことを諦めてしまう場合や、心臓病などの影響で体力が低下し、排泄の我慢ができなくなることも考えられます。

これらの病気や疾患は、早期発見・早期治療が愛犬の健康維持に不可欠です。
お漏らし以外にも、食欲不振、元気がない、歩き方がおかしいなどの症状が見られる場合は、速やかに動物病院を受診することが推奨されます。

*認知症の可能性

高齢になると、犬も認知症を発症することがあります。
認知症になると、トイレの場所を認識できなくなったり、排泄のタイミングを失ったりして、お漏らしをしてしまうことがあります。
徘徊や夜鳴きといった他の症状が見られる場合は、認知症の可能性も疑われます。
認知症によるお漏らしは、排泄のコントロールそのものが難しくなるため、他の原因とは異なるアプローチが必要になることがあります。

例えば、トイレの場所を分かりやすく表示したり、決まった時間にトイレに誘導したりするなどの工夫が有効です。
また、認知症の進行を遅らせるためのサプリメントや療法食なども存在するため、獣医師に相談してみるのも良いでしょう。
愛犬の行動の変化に注意深く目を向け、認知症の兆候が見られた場合は、早期に専門家へ相談することが大切です。

□老犬のお漏らし対策

原因が特定できたとしても、それに応じた対策が必要です。
ここでは、環境整備やケア、排泄を促す方法など、具体的な対策をご紹介します。

*環境整備とケア

お漏らしをしてしまった際の処理は、迅速に行うことが重要です。
フローリングなどの床に漏らしてしまった場合は、まず吸水性の高いシーツやタオルで水分を吸い取り、その後、犬が舐めても安全な除菌・消臭スプレーでしっかりと拭き取りましょう。
愛犬がリラックスできる環境を作ることも大切です。
滑りにくい床材にしたり、寝床の近くにトイレを設置したりするなど、愛犬の負担を減らす工夫をしましょう。

具体的には、カーペットやジョイントマットなどを敷くことで、足元が滑りにくくなり、移動の際の負担を軽減できます。
また、トイレの設置場所は、愛犬が落ち着ける静かで安心できる場所にしましょう。
複数の場所にトイレを設置することも、間に合わない場合の予防策として有効です。
お漏らしをしてしまった場所の臭いをしっかりと消臭することも、同じ場所での失敗を防ぐために重要です。
消臭が不十分だと、犬はそこに排泄しても問題ない場所だと認識してしまう可能性があります。
定期的な掃除と消臭を心がけましょう。

*排泄を促す方法

排泄のタイミングを把握し、声かけや誘導で排泄を促すことも効果的です。
例えば、寝起きや食後など、排泄しやすいタイミングでトイレに連れて行ってあげましょう。
また、お漏らしをしてしまったとしても、決して愛犬を叱らないでください。
犬は「お漏らしをしたこと」ではなく「排泄したこと」自体を叱られたと感じてしまい、排泄を我慢するようになったり、飼い主さんを怖がるようになったりする可能性があります。

日頃から愛犬の排泄のパターンを記録しておくと、排泄しやすいタイミングを掴みやすくなります。
トイレに連れて行く際には、「ワンツー」など、排泄を促すための決まった声かけをすることも、習慣づけに役立ちます。
成功した際には、優しく褒めてあげることで、トイレでの排泄を肯定的に捉えるように促しましょう。

お漏らしをしてしまった場合でも、過度に反応せず、淡々と処理を行うことが大切です。
飼い主さんの過剰な反応は、犬に不安を与え、かえって問題行動を助長する可能性があります。

*専門家への相談

お漏らしの原因が病気や疾患、認知症など、ご家庭でのケアだけでは難しいと判断される場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。
獣医師に相談することで、適切な診断と治療を受けることができます。
また、お漏らし対策グッズとして、マナーベルトやマナーパンツ、防水シーツなども市販されています。
これらを活用することも、お漏らしの悩みを軽減する一助となるでしょう。

獣医師は、愛犬の健康状態を総合的に判断し、原因に応じた具体的な治療法やケアの方法を提案してくれます。
薬物療法や食事療法、あるいは行動療法など、様々な選択肢が考えられます。
市販のグッズを活用する際も、愛犬の体格や状況に合ったものを選ぶことが重要です。
例えば、マナーベルトやマナーパンツは、適切なサイズを選ばないと、かえって愛犬にストレスを与えてしまう可能性があります。
専門家のアドバイスを受けながら、最適な対策を見つけていきましょう。

□まとめ

老犬のお漏らしは、老化による筋力低下だけでなく、様々な病気や疾患、認知症などが原因となっている可能性があります。
まずは原因を特定し、叱らずに優しくケアをすることが大切です。
環境を整え、排泄を促す工夫をするとともに、必要に応じて動物病院を受診し、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
愛犬が安心して快適に過ごせるよう、飼い主さんが根気強く向き合い、適切なサポートをしていくことが、愛犬との絆をより一層深めることにつながるはずです。