高齢の猫がご飯を食べない原因と食欲を回復する方法

猫は気まぐれな生き物ですが、年齢を重ねると食欲が落ちてしまうことがあります。
特に高齢になると、体の変化とともに食欲にも影響が出ることがあり、飼い主としては心配になるものです。
そこで今回は、高齢猫がご飯を食べなくなる原因と、ご家庭でできる具体的な対策について解説します。
愛猫の健康維持のために、ぜひ参考にしてください。

□高齢猫がご飯を食べない原因

高齢猫がご飯を食べなくなる原因は、一つではなく、いくつかの要因が複合的に関わっている場合があります。

*基礎代謝の低下

加齢とともに、猫の基礎代謝は低下します。
基礎代謝とは、生命を維持するために最低限必要なエネルギー量のことです。
筋力量の低下や細胞の活動が緩やかになることで、消費カロリーが減少し、それに伴って食欲も低下することがあります。
特に運動不足は筋力低下を招き、基礎代謝をさらに低下させる要因となります。

*噛む力の衰え

年齢を重ねると、歯が弱くなったり、顎の力が衰えたりすることで、食べ物をうまく噛めなくなる猫がいます。
特にドライフードのような硬いものを主食としている場合、噛むことが困難になり、食欲不振につながることがあります。

*口内トラブル

口内炎、歯周病、口の中の怪我なども、高齢猫の食欲低下の大きな原因となります。
口の中に痛みがあると、食べることに強い抵抗を感じてしまいます。
高齢猫は唾液の分泌量が減少し、口内環境が変化しやすいことから、口内炎や歯周病を発症しやすくなる傾向があります。
歯周病は放置すると重症化し、抜歯が必要になる場合もあるため、早期のケアが重要です。

*ストレス

猫は非常にデリケートな動物であり、ストレスを感じやすい生き物です。
引っ越しや家族構成の変化、新しいペットの増加、飼い主とのコミュニケーション不足、動物病院への受診などもストレスの原因となり得ます。
高齢猫は特に環境の変化に敏感になるため、普段と変わらない安心できる生活を維持することが大切です。

*病気の可能性

食欲不振は、様々な病気のサインである可能性も考えられます。
消化器系の疾患、腎臓病、肝臓病、ウイルス性の病気、熱中症、肺炎、貧血など、高齢猫がかかりやすい病気は多岐にわたります。
また、猫は元々水をあまり飲まない動物ですが、必要な水分を摂取できていないと脱水症状を起こし、食欲が低下することもあります。
病気が疑われる場合は、自己判断せずに獣医師の診断を仰ぐことが重要です。

*高齢猫のご飯対策

高齢猫の食欲が低下した場合、原因に応じた対策を講じることが大切です。

◻︎ストレス原因の除去

もしストレスが原因だと考えられる場合は、その要因を取り除く努力をしましょう。
例えば、猫が寂しさを感じているようであれば、おやつを置いたり、安心できる場所を作ってあげたりすることが有効です。
環境の変化によるストレスには、使い慣れた毛布やおもちゃなどを与えることで、安心感を与えられます。
多頭飼いの場合や家族が増えた場合は、高齢猫が落ち着ける空間を確保し、他の猫や家族との接触を調整することも考慮しましょう。

*ご飯内容の工夫

高齢猫の食欲を刺激するために、ご飯の内容を工夫してみましょう。

  • やわらかいごはんを与える: 噛む力が衰えている猫には、ウェットフードを与えたり、ドライフードをぬるま湯や猫用ミルクでふやかしたりするのが効果的です。
    ふやかすことで香りが立ち、猫の嗅覚を刺激して食欲を増進させる効果も期待できます。
  • 年齢に合ったキャットフードを用意する: 猫の年齢によって必要な栄養素や消化能力は異なります。
    高齢猫用のフードは、消化吸収しやすく、少量で多くの栄養が摂れるように工夫されています。
    年齢に合ったキャットフードを選びましょう。
  • おいしいキャットフードを与える: 単純にフードの味が好みでない、という可能性もあります。
    子猫の頃に食べていた味を好む猫もいるため、過去に好んでいた味や香りのフードを試してみるのも良いでしょう。

*ご飯与え方の工夫

ご飯の与え方一つで、猫の食欲が変わることもあります。

  • 器を工夫する: 猫が落ち着いて食事ができるような、シンプルで安定感のある器を選びましょう。
  • 静かな環境で与える: テレビの音や洗濯機の音など、猫がストレスを感じるような大きな音を避け、静かな場所で食事を与えましょう。
  • 食べやすい位置に置く: 高齢猫が無理な姿勢をとらなくても良いように、食器の高さや位置を調整してあげましょう。
    首への負担を軽減することで、食事のしやすさが変わります。
  • 食事の回数を増やす: 一度に食べる量が減る高齢猫には、1日の食事回数を増やすことで、総摂取量を確保しやすくなります。

*動物病院受診の目安

ご家庭での対策で改善が見られない場合や、猫の様子がおかしいと感じる場合は、動物病院への受診を検討しましょう。

  • 吐き気や嘔吐などの症状を伴っている場合: 食欲不振に加えて、吐き気や嘔吐、元気がない、痛そうにしているなどの症状がある場合は、病気の可能性が高いです。
  • 1日以上ごはんを食べない場合: 目立った症状がなくとも、24時間以上全く食事をとらない状態が続く場合は、注意が必要です。
    特に高齢猫は体力が低下しているため、早めの受診が推奨されます。
  • 少量しか食べない状況が72時間以上続いている場合: 全く食べないわけではなくても、普段より明らかに食べる量が少ない状態が3日間以上続いている場合も、獣医師に相談しましょう。

□まとめ

高齢猫がご飯を食べなくなる原因は、基礎代謝の低下、噛む力の衰え、口内トラブル、ストレス、病気など多岐にわたります。
これらの原因に対し、ご飯の内容や与え方を工夫したり、ストレス要因を取り除いたりする対策が有効です。
しかし、猫の様子がおかしい場合や、長期間食事がとれない場合は、病気の可能性も考えられるため、動物病院での早期受診が重要となります。
愛猫の健康寿命を延ばすためにも、日頃から愛猫の様子をよく観察し、適切なケアを心がけましょう。